君と僕の未来の為に2
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家を飛び出した事までは覚えているが、
それから自分が何処をさ迷い歩いているのかもわからなかったレインは。
「ママァー!」
アレンの声が後ろから聞こえて、驚いたように立ち止まって後ろを見た。
「よかった…間に合った…」
随分急いで追い掛けて来たのだろう。
肩で息をする二人を申し訳ない気持ちで抱き締めた。
「ごめんなさいね…心配させちゃったわね…」
涙で潤む瞳で精一杯笑いかける姿に胸が痛くなる。
一人で苦しんで欲しくなくて、二人はレインの服の裾を掴んだ。
「ママ、どうしたの?今日なにがあったの?」
心配そうな声に少し戸惑うように俯いたレインは、
そっと二人の頬を撫でると小さく笑った。
「今日はね、ママの中でとても大切な日…結婚記念日なのよ」
「けっこん…きねんび?」
「そう。パパとママが結婚してから今日で6年目なの」
毎年、この日はドモンが出掛けたり忙しかったりでお祝いなんて出来なかった。
でも、今年はやっと、ドモンからお祝いをしようと言ってくれたのだ。
『子供達もいるし、二人で祝う事なんて出来ないが…今年は…一緒にいよう、か…』
レインが毎年祝いたがっていた事を知っていたのだろう。
照れた顔を俯けて。
精一杯強気な瞳で言ってくれた事が本当に嬉しくて。
今日までの数日間、まるで遠足を待ち侘びる子供のように楽しみにしていたのだ。
人に言わせればたかが結婚記念日と言うかもしれない。
でも紆余曲折の後、結婚を決意してくれたドモンの気持ちを大切にしたかったのだ。
『っ!そんなものどうでもいい!』
ドモンのさっきの言葉が頭の中で何度も鳴り響く。
大切な日だと思っていたのは自分だけなのかと思ったら、
裏切られたような、寂しいような気持ちに襲われた。
「ママ…泣かないで」
「泣かないでください」
自分がしていたように二人に頬を撫でられて、
初めて自分が涙を流していた事に気付いたレインは。
「やだ…っ!泣いちゃったりして」
格好悪いわね、なんて精一杯微笑もうとする姿が痛々しかった。
「さ、じゃあ御飯でも食べに行きましょうか!」
そう言ってレインは自分のジャケットを二人に羽織らせる。
「しっかりくっついているのよ?寒いから」
「い、いいわ!ママの方が寒いじゃない!」
ピンクの長袖のワンピースは、レインにとてもよく似合っていたけれど、
それ一枚では冬の寒空の下では寒過ぎる。
「ママは寒くないわ」
強いんだから、なんて拳を握ったら。
「いくら強くても女性が冬場に歩くには寒過ぎる恰好だな」
後ろからフワリと何かを掛けられて。
それが白衣だと気付いた瞬間、レインは驚いたように振り向いた。
「キ、キョウジさん!?」
「久しぶりだな、レイン」
差し出された手は、確かにキョウジのもので。
そっと立ち上がらせてくれる姿に、レインは暫く呆然と見つめてしまった。
「そんなに私はもの珍しいのかな?」
小さく苦笑する姿に、レインは堪えていた喜びを我慢できなくなったように
強く手を握り返した。
「いつ、こっちに?」
「つい先刻だ。久しぶりのネオジャパンだな」
キョウジはライゾウの力によって生き返ってから(『旅立ちの詩』参照)
しばらくシュバルツとしてネオドイツのガンダムファイターをしていたが、
ドモンと同時にガンダムを降り、今は本名を名乗り、
海洋学者として世界中を研究で巡っていた。
「私が以前見た時はトウヤが生まれた時だったのだが…大きくなったな。
アレンも大きくなった」
不思議そうな二人の頭をそっと撫でながらキョウジは優しく微笑む。
「立ち話も何だな。ホテルを取ってあるからよかったら来ないか?」
帰れない理由があるんだろう?と言うキョウジに、
何故いつもわかってしまうのだろうとレインは首を傾げる。
「伊達に君達より歳を取ってないさ」
そっと差し出される腕に誘導されるように、三人はキョウジに付いて行った。
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→3ヘ
キョウジさん登場。
レインが困った時は彼でしょうって事で(笑
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