かなしそうな顔3

   *********


   [5:かなしそうな顔]

   「今日は本当にありがとう」

   ホテルの前まで送ってくれたシュバルツに笑いかけて、
   自分の気持ちを押さえるようにスカートを右手で握り締める。

   「こちらこそ。楽しかった」

   そっと微笑まれる瞳に溢れそうになる気持ちを必死に堪える。

   明日は敵同士になってしまうかもしれない人。
   決して気持ちを打ち明けてはいけない人。

   わかっているのに気持ちが止めることが出来ないのは、
   誰よりも側にいて欲しい存在だからなのかもしれない。
   今の現状を怨んでしまっても仕方ない事はわかっている。
   GFがなければ出会わなかったかもしれない。
   でも、GFがなければもっと別の出会い方が出来ていたかもしれないなんて。
   そんな事を考える事自体間違っている事は知っていたが、
   悔しさと悲しさに涙が溢れてくるのを止められなかった。

   「…レイン」
   「さようなら!」

   だから、せめて精一杯笑顔で言いたかった。
   泣いてしまえばシュバルツが困る事はわかっていたから。
   何度願ったとしても叶わない事など、わかっていたから。

   「お互い、頑張りましょうね」

   何か言われたらきっと泣いてしまう。
   かなしそうな顔で見送りたくなんてなくて。
   精一杯の笑顔で小さく手を振った。

   「…あぁ、頑張ろう…」

   全てを理解したように頷いたシュバルツは、
   一瞬だけレインに伸ばそうとした掌を強く握って。

   「おやすみ」

   風のように消えていってしまった。

   静けさだけが残る夜空を見上げて、レインは大きく息を吐き出した。

   「さよなら…シュバルツ」

   ちゃんと笑顔で言えた。
   涙なんて見せないように頑張ったから。

   「明日からは笑顔で頑張るから…今だけは…」

   泣いてもいいわよね、と呟いて。
   そっと瞳を閉じた。

   END

   *********

   誰よりも好きなのに打ち明けられない。
   お互い一緒にいたいと思うのに出来ない辛さ。
   シュバルツとレインの恋はそんな気がします。
   というか、設定的に無茶が、、、(苦笑
   アレンビー誘拐事件がなかったらって事で(大汗


Novel's Top