旅立ちの詩5

   *********


   「こうしてまた、レイン、君と会う事が出来るとはな…」
   「本当に…夢みたいです」

   キョウジが目覚めてから一週間。
   事情を全て聞き、受け入れたキョウジは、
   レインを誘って公園に散歩をしに来ていた。

   「これからはずっと、家族一緒ね…」
   「…その事なんだが、ネオドイツに戻ろうと思う」
   「え?」

   キョウジの言葉に驚いたレインは、足を止めて立ち止まった。

   「どうして!」
   「向こうは私が死んだ事を知らずに、今でも捜索しているらしい。
    もう2年も経つというのにな。
    だからもう一度、シュバルツ・ブルーダーとして生きようと思う」
   「そんな!せっかくドモンもおじ様も喜んで…っ!」
   「…レイン」

   叫ぶレインを宥める様に口を押さえたキョウジは、
   目の前に広がる海を見つめた。

   「私は、元はGFなんてするつもりもなかったし、
    DGを倒す為にドモンを影から少しでもサポートしようと
    シュバルツの体を利用しただけだった」

   潮風がキョウジの髪を靡かせて、強く輝く瞳をより鮮明に見せた。

   「しかし、今は再びドモンと戦いたくなったのだ!ファイターとして!」
   「でも、ドモンはあなたと戦いたいとは思わないはずだわ!」
   「いや、思うさ」
   「え?」
   「奴が誠のファイターならば思うはずだ!」
   「確かに、最近になってまたGFが復活したわ。
    でも、そんな事したって仕方ないじゃない!」

   DGの事件があって以来、無くなるだろうと思われていたGFは、
   再び再開される事になった。

   「私を待ってくれている国民もいる」
   「ドモンだっておじ様だって…私だって側にいてくれる事を望んでいるわ!
    何故それがわからないの!?」

   涙を流して抱き着くレインを抱き締めたキョウジは。

   「家族に甘える事なく孤独に生きるのが、私の罪の償い方なのだ」

   わかってくれ、と囁いてレインの頬にそっと口づけると手を離した。
   DGになったアルティメットガンダムを止める事が出来ず、
   操られるままに地球を汚し、家族を、関係ない人々を巻き込んでしまった罪。
   キョウジも同じく、罪を背負って生きて来たのだ。

   「…キョウジさん」
   「シュバルツだ」
   「…シュバルツ…」

   涙で濡れた瞳で見つめるレインに優しく微笑みかけたシュバルツは。

   「次は君をかけてドモンと戦うのも悪くないな」
   「え?」
   「ドモン!父さんを…レインを任せたぞ!」
   「ドモン?…っ!キョウジさん!!」

   いきなり大声で叫ぶと、レインの目の前から笑って消えてしまった。

   「…いいのか」
   「え?」

   シュバルツが消えた方向をずっと見つめていたレインは、
   後ろから聞こえた声に驚いたように振り返った。

   「ドモン!?」

   そこにはいくらか仏頂面のドモンが立っていた。
   おそらく二人の会話をずっと聞いたのだろう。

   「あなたは…いいの?」

   せっかく一緒にいられるようになったのにと聞いてくるレインに頷く。

   「それが兄さんの望んだ事なら構わないさ」

   ある程度覚悟していた部分があったのだろう。

   シュバルツと同じ様に海を見渡したドモンの瞳が、一瞬だけ淋しそうに揺れた。

   「それより、お前は…いいのか」
   「え?」
   「だ、だから!本当は好きなんだろ!兄さんの事!」

   自棄になったように叫ぶドモンに、涙を拭いて笑ったレインは。

   「えぇ、好きよ!」

   楽しそうに言って歩き出した。

   「本当は俺なんかより…っ!」
   「だって!」

   後を追い掛けてくるドモンの声を遮るように叫んだレインは。
 
   「大好きなあなたが大好きな人なんだもの!」

   好きに決まってるじゃない、と人差し指を立ててウインクすると。

   「そ、そうか」

   顔を赤くしたドモンに幸せそうに抱き着いた。

   END

   *********

   なんだかんだで長くなってしまってすみません(汗)
   研究でそんな事が出来るのか、とか、難しい質問は無しにしてください(爆)
   なんだかドモンが子供、、、というか乙女になってますね。


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