海水浴に行こうよ

   *********


   青い空、白い雲。
   透き通る様なエメラルドグリーンの海。

   キ「海にはクラゲもいるんだからやたらめったら何でも触るんじゃないぞ」

    『はーい!キョウジ先生!!』

   幼稚園のプールが壊れて使えなくなってしまったので、
   今日はみんな近くの海に海水浴に来ました。

   レ「キョウジせんせ、レインね、あたらしいみずぎをかったの」(ポッ

   サ「すっげー!かわいい!!」

   セ「サイシーくん!」(ムッ

   ジ「わぁ、かわいいみずぎですねぇ!バラのはなのようですよ」

   キ「あぁ、とっても可愛いぞ、レイン」

   レ「ほんと!?うれしい!」

   ド「セクハルだ…」(ボソッ

   シ「それをいうならシャクハラじゃないのか?」

   ジ「ドモン、シュバルツ。それをいうならセクハラですよ」

   ナ「セクハラは、はんざいだぞ」

   チ「へんたいなヤツをいうんだな!」

   キ「チボデーもナスターシャもお前らも、納得するな」(溜息

   そんなこんなでやっぱり楽しい海水浴。
   楽しい時間は一瞬で。
   気付けばもう夕暮れ近くになっていました。

   キ「さぁ、もう終わりだ!帰るぞ」

   ド「なんだと!?まだあそびたりないぞ!」(怒

   サ「そうだ!アニキのいうとおりだ!!」

   セ「かえりたくない…」

   アル「うむ。まだじかんはある」

   ア「先生達の言う事聞かないと置いてっちゃうわよ☆」

   チ「ジャパニーズ、アルゴきをつけろ!」

   ジ「アレンビーせんせいならやりかねませんよ!」

   ナ「はんたいは、むりなようだな」

   キ「さ、バスに乗りに行くぞ」

   ド「チッ…」

   レ「かえりたく…ないな」(ボソッ

   シ「どうした、レイン」

   レ「レイン、おかあさんにきいたことがあるの」

   シ「なにをだ?」

   レ「このうみにはおっきなどうくつがあって、そのなかにはきれいなほうせきがあるのよって…」

   シ「そうなのか?」

   レ「それをみたひとは、しあわせになれるって」

   ア「みんな急いで〜!」

   レ「レイン、それをみてみたいの!」

   シ「だがもう、かえるじかんだぞ?」

   キ「こらドモン!早く乗りなさい!」

   レ「わかってる…かえろ?」(苦笑

   シ「…」

   キ「おーい!シュバルツ、レイン!帰るから早く来なさい!」

   レ「はーぃ…」

   シ「レイン」

   レ「?…シュバルツ??」

   シ「わたしがきみにみせてあげよう」

   レ「シュ、シュバルツ!?」(驚

   レインの小さな手を掴んだシュバルツは、
   そのまま来た道を引き返すように走り出してしまいました。

   キ「あぁ!!」

   ド「あ!シュバルツがレインをゆうかいしたぞ!?」(怒

   サ「ゆーかい??」

   ジ「どこにいくんでしょう!?」

   アル「そんなとおくにはいくまい」

   キ「シュバルツ…何を考えてるんだ!」

   ア「『俺の』レインを掻っ攫いやがって!でしょ?」(ニヤニヤ

   キ「ち、違っ!」(汗

   チ「いいあってるばあいかよ!」

   ナ「はやくおいかけるんだ!」

   キ「はっ!そうだ!!みんなはここで待っててくれ。先生が探してくるから」

   レインを洞窟に連れて行ってあげようと連れ去ったシュバルツ。
   一体どうなってしまうのでしょうか。

   レ「はぁ、はぁ…」

   シ「だいじょうぶか?レイン…」

   レ「うん、だいじょうぶ。ごめんね、シュバルツ…」

   シ「あやまるひつようなんてない」

   レ「でも、わたしのわがままで、シュバルツまでおこられちゃうわ」(涙

   シ「かまわないさ」

   レ「シュバルツ?」

   シ「わたしも、もうすこしきみとあそびたかったのだ」(ニッコリ

   レ「シュバルツ…ありがとう」

   キ「レイーン!シュバルツー!何処だぁ!!」

   シ「あっちのほうでどうくつをみた。いそごう」

   レ「うん!」

   やっと見つけた洞窟。
   もう少し、あと少しだから…今だけは帰りたくない。
   二人は繋いだ手をもう一度強く握って、走り出しました。
   でも、そんな時間はやっぱり長くは続かなくて、
   追いかけて来たキョウジ先生に二人は見つかってしまいました。

   シ「あったぞ!」

   レ「やったぁ!!」

   キ「見つけたぞ、シュバルツ、レイン!そこは岩場で危険なんだ!先生が行くまで動いちゃ駄目だ!!」

   レ「でもせんせ、どうくつがそこに…キャッ!」

   慌てて走り出そうとしてしまったレインが、
   その場で脚を滑らせて転んでしまったから、大変です。
   赤く染まって行く脚を押さえたまま動けなくなってしまいました。

       シ「レ、レイン!!」

   キ「どうした!何があったんだ!!」

   レ「いた…っ」(涙

   シ「しまった!こけたひょうしに、いわであしをけがしたんだ!!」

   キ「!待ってろ、今行く!」

   レ「キョウジ…せんせ…っ」

   シ「わたしがついていながら!すまない、レイン!!」(真っ青

   キ「大丈夫か!?」

   レ「せんせ…キョ、ジ…せんせっ…うわぁあああん!」

   キ「大丈夫だレイン!」

   泣きわめくレインを強く抱きしめて自分の服の裾を破ったキョウジ先生は、
   それをそっと痛む脚に巻き付けてやりました。

   レ「っ!せんせ、ふくが!」

   キ「いいからじっとしてるんだ。…取り敢えず止血は出来たが…」

   シ「すまない…わたしが…」

   キ「シュバルツ!!」

   シ「っ!」

   キ「何故レインをこんな所に連れて来たりしたんだ!」

   レ「せんせ、違っ!」

   シ「…」

   キ「シュバルツがこんな事をしなければレインだって怪我をしなかったんだぞ!?」

   シ「…すまない」

   レ「せんせ、ちがうの!レインがわるいの!!」

   キ「レインもレインだ!何故危険だと分からないんだ!!」

   レ「(ビクッ)ふ、ふぇえええ〜ん」

   シ「…グスッ」

   キ「〜〜〜っ!すまない、怒りすぎたな。心配したんだ…」

   レ「ごめ、なさ…っ」

   シ「ごめんなさい…」

   キ「二人とも…無事でよかった」

   本当はキョウジ先生だって怒りたくはなかったのです。
   でも、二人に何かあったらどうしようという不安と緊張の時間が、
   やっと安堵に変わった瞬間に怒鳴りつけてしまっていたのでした。
   瞳を潤ませて見つめてくる二人に大きく溜息を吐き出したキョウジ先生は、
   心配した気持ちを伝えるように、強く二人を抱きしめました。

   レ「ふ、ぅえ、うわぁああああん!」

   シ「ぅわあぁああああん!!」

   キ「二人共、どうしてこんな岩場に来たんだ」

   レ「あのね、おかあさんが…ひっく…ここにはほうせきがある…って」

   シ「グスッ…みたら…しあわせになれると…」

   レ「レインどうしても、みたくて…っ…シュバルツに…おねがい、したの」

   キ「そうか…」

   レ「だから、シュバルツはわるくないのぉ…わるいのは、レインなの…っ」(泣

   シ「レイン…」

   キ「そうか…ごめんな、シュバルツ。怒ったりして…だけど、それくらい心配したと分かってくれるな?」

   シ「…」(コクンッ

   キ「あの洞窟にあるのか?」

   レ「うん。だってここにあるどうくつ、あれだけだから…」

   キ「じゃあ、一緒に見に行こうか」

   レ「い、いいの!?」

   キ「折角ここまで来たんだ。みんな、おいで!!」

   ド「レイン!だいじょうぶか!?」

   シ「ドモン、はしるとこけますよ」

   チ「はやくよべよな〜!」

   ナ「おそい!!」

   アル「あぶないいわばだな」

   サ「うわっ!すべったー!!」

   セ「サイシーくん!?」

   ア「迎えに来たわよ〜!」

   レ「ドモン!みんなも…」

   キ「全く、待ってるという事を出来ない奴らだな」(苦笑

   シ「いこう」

   レ「うん!」

   滑りやすい岩場に足を取られない様に気をつけて、
   みんなで手を繋ぎながら歩いていきます。
   果たして中にあった宝石とは何だったのでしょうか…。

   レ「うわぁ〜」

   ド「はなだ!どうくつのなかにしろいはながさいてるぞ!?」

   ジ「しかもそのまわりを、みずがかこってますよ!」

   チ「みずがはなをまもってるんだ!」

   ナ「すばらしいな」

   サ「すっっげぇええ!」

   セ「きれい…」

   アル「すばらしい…」

   キ「確かに、宝石みたいに綺麗な景色だな」

   ア「願いが叶いそうってのも分かる気がするね」

   レ「うれしい…すごくきれい」

   シ「レイン、おねがいをするんじゃないのか?」

   レ「う、うん!」

   ア「じゃあさ、みんなで手を繋いで目を閉じてお願いしようよ!」

   ジ「それはいいですね!」

   ド「ね、ねがいか…」(真っ赤

   レ「キョウジせんせ。て、つないでいい?」

   キ「あぁ、さあ繋ごう」

   シ「よかったな、レイン」

   レ「うん!ね、シュバルツも!」

   シ「わ、わたしもか?」(汗

   レ「ね?てをつなご!」

   シ「あ、あぁ」(照れ

   キ「(ムッ)さ、目を閉じようか」

   爽やかな塩の香りと甘い花の匂いがみんなを包み込んで。
   とても神聖な気持ちが広がっていく気がしました。

   キ「さ、みんなもう行こうか」

   ア「お母さん達が帰りを待ってるわよ!」

   ジ「とてもすてきなおもいでができましたよ」

   チ「ビューティフルなばしょだったぜ!」

   アル「かんどうしたな、ナスターシャ」

   ナ「アルゴ…そうだな」

   サ「こんどはふたりでこようね!」

   セ「うん!サイシーくん」

   ド「ふん、まあまあだな」

   レ「ふふふ…」

   シ「おかあさんにじまんできるな、レイン」

   レ「うん。それもぜんぶシュバルツのおかげだよ」

   シ「そんな…わたしはなにも」

   レ「レインをつれてきてくれたもん」

   シ「レインのよろこぶかおが、みたかったんだよ」

   レ「ありがとう…すごくしあわせだよ?」

   シ「よかった…」(照れ

   キ「(ムカムカ)さぁ、治療もしなきゃな!帰るぞ、レイン」

   レ「うん!さ、行きましょシュバルツ」

   シ「あぁ…ほんとうは、ふたりきりになりたかっただけなんだがな」(ボソッ

   レ「え?なにかいった?」

   シ「なんでもないさ!さぁ、かえろう!」

   本当は君の笑顔が見れたから、願い事なんて叶わなくてもいいんだ、なんて。
   口に出しては言えない言葉をそっと心の奥に潜ませて。
   沈み始めた夕日にシュバルツはそっと瞳を細めました。

   願いが叶う奇跡の洞窟。
   みんなは一体どんなお願いをしたんでしょうか。
   きっととても素敵なお願いなんでしょうね。

   おしまい

   *********


   B様のリクで『シュバレイかっ攫い』、、、です(大汗
   リクとだいぶ違う上に幼稚園話で申し訳ないです!!
   キョウジとシュバルツ2人がレインを巡る微妙な(?)関係も楽しんで頂ければと思います☆


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