白熱戦

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   合宿の遊戯室は異様な熱気に包まれていた。
   下ネタばかりが連発する話をして盛り上がっているヤツラや、
   我関せずといった顔で漫画や音楽に没頭しているヤツラが集まり、
   暑苦しい雰囲気を醸しだしている。

   「お、俺は悪くないぞ!」
   「それはこっちのセリフだぁ!」

   その中でも特に熱気を出している人物が約2名。

   「絶対田島の下らん命令なんか聞かん!」

   普段の澄ました表情からは想像もつかないような叫び声を上げて
   スマッシュを繰り出す花井と。

   「下らんことなんかない!大問題だー!!」

   ムキになってボールを打ち返す田島の二人だ。

   「な、何が『何で浴衣着るの!?そんな色っぽい姿人目に晒すなー!
    長ズボン穿け!!』だ!んな熱いカッコできるか、バカ!」
   「誰が花井の事を邪な目で見てるかわからないんだぞー!
    花井は只でさえ可愛いんだから!オレが卓球で先に15点取ったら絶対穿けよ!」
   「邪なのはお前だああああああ!!!」

   初めは2人の気迫に驚いてジッと見ていた人々も余りの下らないやりとりに、

   「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」

   とあきれたように自分達の会話に戻っていった。
   それから延々こ一時間。
   いい加減勝敗が決まってもいいものなのだろうが、
   どちらも意地でもボールを取り続けるのでなかなか決まらないのだ。

   「…ほんっと…懲りない…ヤツだな」
   「それは…こっちの…セリフ…」

   さすがに息が切れてきた二人は、
   それでもラケットを握りしめたままニラミ合っている。

   「一点、勝負に、、、、したら、どう?」

   ずっと傍観していた三橋が思いついたように小さく呟いた。

   「野球は9回裏2アウト満塁からだ。逆転満塁ホームラン決めてやる!」
   「ふふふ。オレはどんな球でも返すよ?」

   そうして始まった2回戦は。

   「花井!胸元だけはだけるのなんか卑怯だぞー!!」
   「お、お前こそ、野球してる時みたいな顔してるくせに!
    オレがその顔に弱いの知ってて!」
   「花井だって潤んだ瞳でオレの事見てるくせに!
    可愛すぎるの分かってんのか〜!?」

   延々20分

   「言い合いしてるのかイチャこいてるのかどっちなんだコイツらは!?」

   というような言い合いを繰り返していて。
   周りはウンザリしたようにそれぞれの部屋に戻ってしまった。

   「三橋、行くぞ」
   「あ、阿部君!でも、2人の、勝負…」

   見たいと目で訴える三橋の手を引くと。

   「オレ以外の男なんか見るなよ」

   そのまま優しく、可愛い恋人を連れ去ってしまった。
   後に残っているのはバカップル2人。
   でも、その勝負もそろそろ終わりを迎えることになる。

   「花井ー!行くぞ!三遊間を抜けるヒットだ!」

   カコンッ!

   「悠一郎…」

   カキッ

   「好き…」

   カコッ

   「え?」

   突然の愛しい恋人からの告白に固まってしまった田島の
   一瞬のスキを見逃さなかった花井は。

   「ぅらあっ!くらえ、サヨナラ弾だ!」

   バキイッ!

   気持ちいいくらいのスマッシュで。

   「初めて田島に野球で勝った気分だ…」

   見事に勝ち点を納めたのだった。

   「卑怯だ〜あんな手使うの!」
   「卑怯じゃない」

   ザマァミロなんて、普段は冷静な顔が子供みたいな笑顔になる花井が可愛くて。

   「結局はオレ、花井だけには弱いんだよな〜」

   どこまでも甘い自分に笑ってしまう。

   「まあ、いっか。『好き、抱いて☆』って言ってもらえたしぃ?」

   からかうように囁く田島が。

   「いいい、言ってない!」

   負けても幸せだと感じる事ができるのは。

   「でも…」

   本当は言いそうになったんだ、なんて。
   照れながら告白してくれる愛しい恋人がいるからかもしれない。

   終わり

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   え〜、、、別人ですね(爆笑
   田島様なら四の五の言わずに押し倒してます(オイ

モドル