HAPPY BIRTHDAY -Last-
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「三橋!!!」
阿部の声に驚いたように目を見開いた三橋は、
近づいて来た存在にまだ信じられないように固まったままで。
「どうした?なにかあったのか!?」
阿部は戸惑ったように三橋を抱きしめて立ち上がらせる。
伝わる温もりに二人して息を吐き出して、阿部はそっと三橋の涙を拭った。
「、、、べ、、、君?」
「ああ、そうだよ」
まだ信じられないように呟く三橋の掌が冷たくなっている事に気づいて、
強く握りしめてやった。
それだけで少しずつ温もりを取り戻して行く掌に、安堵にも似た息を吹きかけて。
「こんなに冷たくして、、、」
馬鹿野郎、なんて照れたように笑いかけた。
何で三橋がここにいるのかはわからなかったけれど、
こうして会えただけでたまらなく嬉しかった。
「オレ、、、オレ!!!」
「ああ、、、」
途端に安心したようにこみ上げてくる涙に、阿部に抱きついて。
嬉しさを堪えるように何度も何度も抱きしめ合う。
「会いた、、、くて!阿部君、、、に、会い、たくて!!」
「うん、、、」
涙でくしゃくしゃになった顔を上げさせてそっと唇を重ねる。
冷たくなった唇に、寒い中何故ここにいたのだろうと思うよりも、
より深い気持ちを伝えるように深く口づけた。
「追いかけて、来た、んだけど!花井、、君、に!!」
「いいよ、もう言わなくていい、、、」
それだけで全ての気持ちがわかったように、阿部は何度も口づけた。
きっと三橋は自分を追いかけて来てくれたんだろう。
でも何処かですれ違いが起きてしまい、会う事が出来なかったのだ。
それだけで、阿部は今までの不安が消えてしまうくらい嬉しかった。
「オレ、どうしても、言い、たい、、、事がっ」
涙を浮かべる三橋の髪を何度も撫でながら続きを促すように頷いてやる。
月に照らされた涙が輝く様に見とれるように小さく額に口づけたら。
「オレ、阿部君、、、が、好き、、、だよ」
精一杯勇気を振り絞るような声で言われて、驚いたように固まった。
「ずっと、自分、、、から、言えなかった、、、から」
ごめんね、と呟かれた言葉に胸が何倍も温かくなった気がした。
「今日は、今日、だけは、、、言わなくちゃ、、、って!」
三橋はどうしてこんなに自分を幸せな気分に出来るんだろうと思う。
一生懸命な言葉がどれだけ自分に宝が詰まった箱を
開けた時のような気持ちを与えてくれるかなんて、きっと三橋は知らない。
不安に思っていた気持ちは、全てかき消されて、
温かい気持ちだけが胸を覆い尽くした。
「オレ、阿部君、が、生まれてくれた、事に、、、感謝、してる、んだ」
側に居てくれてありがとう。
一緒に野球をしてくれてありがとう。
こんな自分を好きになってくれてありがとう。
「大好き、、、だから。大好きな、阿部君が、生まれた、日だから」
生まれてくれてありがとうーーー。
「側に、、、いたかった、、、んだ」
最後は嗚咽になってしまって。
ちゃんと伝わったのか不安だったけれど。
優しく抱きしめてくれた温もりに全てをちゃんと伝えられた事に安堵した。
「、、、馬鹿」
こんな時にも憎まれ口しか言えない自分なのに。
「、、、うん」
そんな自分を受け入れて愛してくれる存在に涙が出そうになった。
きっと、どんな素晴らしいプレゼントよりも、
三橋が側に居てくれる事が最高のプレゼントなのだ。
「ずっと、、、オレの側にいろよ」
「うん、、、いる、、、よ」
側に居てくれてありがとう。
一緒に野球をしてくれてありがとう。
こんな自分を好きになってくれてありがとう。
「オレも、お前が居る世界に生まれて来れてよかった、、、」
生んでくれてありがとうーーー。
二人で微笑んで、小さな星達と輝く月に祝福されながら、
そっと小さく口づけた。
HAPPY BIRTHDAY☆
おわり
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大切な存在だからこそ素直になれない。
モドル