シャララン

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   真っ暗になった公園は、小さな街灯で照らされていて。

   冷たい風と、綺麗に澄んだ空に輝く星達が、冬の訪れを教えてくれている。

   こんな寒空の下で、大の男が二人身を寄せ合い座っている姿は。

   さぞ星達の目にも滑稽に写るんだろうなぁ、なんて白い息を吐きながら考えて。

   そんな事を考えている自分がなんだかおかしくて小さく笑った。

   「どうしたんだ?」

   優しい瞳で聞いてくる声が暖かくて。

   照れ臭くて…

   「なん、にも、、、ない、よ」

   綺麗な瞳から視線を外して、プイッと横を向いてやる。

   「三橋って時々、すっげぇ子供っぽくなるな」

   幼稚園児みたい、なんて小さく微笑む声が恥ずかしくて。

   「阿部君、だって、同い年だ、、、もん」。

   思わずすねたように反論してしまう。

   そんな仕草が子供みたいだと言われているのは分かっていたけれど、

   こんな風になってしまうのは阿部のせいなんだって。

   勝手に自分に言い聞かせて。

   どこか理不尽に感じる空気に、照れたように膝に置いた手を強く握った。

   「なぁ…」

   不意に、握りしめた手に感じる、優しい暖かさ。

   その温もりが、阿部の手が自分の手を包み込んだからだと分かって。

   「う、うわっ!」

   慌てたように引いた腕は、柔らかく引きかえされ、

   そのまま両手で優しく握りしめられる。

   「うわ、珍しい。三橋今日は手、あったかいな…」

   空に輝く星々よりも綺麗な笑顔で笑いかけられて。

   「手が、温かい人は、、、心が冷たい、んだって、、、聞いた」

   照れたように俯きながら、ちょっと拗ねたように返したら。

   阿部にもう一度手を強く握られた。

   「違うよ。手が暖かいのは、大好きな人が側にいるからだ」

   だからオレも、なんて言いながら微笑まれて、たまらなくなる。

   どうしてこんな恥ずかしい台詞を堂々と言えるのか分からない。

   それでも、そんな普通の人が言ったらキザに聞こえるだろう台詞が、

   ちっともキザに聞こえないのは。

   「本当だ!」

   信じてくれよ、なんて言う瞳が。

   真剣な気持ちを伝えてくるからかもしれない。

   「ほら、ETっているじゃん?」

   「え?」

   急に振られた話題に、意味が分からないという顔をしていると。

   阿部は自分の右手を顔の前に持ってきて人差し指を立てた。

   「ETって人差し指を男の子とくっつけてるだろ。アレは何でだと思う?」

   その人差し指を、三橋の心臓のあたりにそっと押し当ててて。

   「意志…伝達…?」

   「正解!」

   俯いてポツリと答えた三橋の頬に、上機嫌でキスをする。

   何を言いたいのか分からなくて、

   訝し気な表情をする三橋の右手を掴んだ阿部は。

   「あれは…きっと、温もりで気持ちを伝えてんだよ」

   すごいよな、なんて笑いながら

   三橋の人差し指に自分のそれをそっと押し付けた。

   そのまましばらく続く沈黙。

   「…な?オレの気持ち、ちゃんと伝わったか?」

   小さな子供にするみたいに頭を撫でながら言われて。

   それがちょっぴり嬉しくもあり、恥ずかしくもあるから。

   「わかんな、いよ」

   真っ赤な顔を見られないようにそっと反らして言う。

   そんな仕草でもう、照れているんだってバレてしまうんだけど。

   「そんなはずないさ。温もりには、音があるんだから…」

   少しすねたように唇を尖らせる阿部が可愛くて嬉しくなる。

   「音…?」

   小さく笑いながら聞き返したら、

   阿部は三橋の両手をしっかり握りしめて目をつぶった。

   「聞こえるよ。気持ちが沢山詰まった音が…」

   暖かい手…

   月の光に照らされた綺麗な顔をしばらく見つめて。

   三橋も阿部と同じように瞳を閉じた。

   「あ…」

    シャララン…

   「なぁ、聞こえた?」

    シャララン…

   「…う、うん」

   優しい、暖かい音。

   気持ちがいっぱい詰まった音…

   本当だね。

   温もりには音があるんだ。

   「な、聞こえるだろ?」

   「あ…」

   不意に両手を離されて、無くなった温もりに悲しくなる。

   寂しくて、阿部の顔を見つめたら、大きな両腕で強く抱きしめられた。

   「こうすればもっと分かるだろ?」

   「…う、うわっ」

   驚いたように阿部を見つめて、二人して抱き合ったまま笑い合った。

   「なぁ、オレがなんて伝えたか分かるか?」

   「う、、、たぶ、、、ん」

   「何?」

   「多分…ううん。絶対、オレと、、、一緒」

   「じゃあ、せーので言おうか」

   「…せーの」


   「「大好き」」


    シャララン…

   END

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   ちょっと大人になった二人(大学生?)がイメージ。
   ほんわかあたたかくなるお話が書きたかったんです☆

モドル