1年B組ゲイ八先生

   *********


   3.ガッツだぜ

   「体育館でも言ったが、1年B組の担任をさせてもらうゲイルだ」

   スペルはこう、と素っ気ない態度で黒板にGALEと書く指の綺麗さに、
   教室中から感嘆にも似た溜息が広がる。
   ゲイルの性格を表したように纏められた青緑の髪。
   どこか近寄りがたい程の切れ長の瞳に、
   女生徒達はうっとりと見つめながら、
   美形の教師に当たったという幸福を喜んでいた。
   その中に混ざって、舐める様にゲイルを見つめていたシエロも例外ではない。
   見事、一目惚れをした教師の下で一年間勉学に励めるのだと考えただけで、
   余りの幸せに絶叫しながら廊下を走り抜けたいくらいの気持ちだった。

   「勉学以外の事も一緒に励みたい…」

   思わず不埒な事を考えてしまうのも、若さ故である。
   暴走した若者の欲望は100キロで駆け抜ける車と一緒だと言ってもいい。
   本人が理性を働かせてもすぐには止まれないのだ。

   「綺麗なだけの男なんて許容範囲外だわ」

   男は不精髭と眼鏡だと言い張るアルジラの好みは、
   ワイルド系なのか知的系なのか謎な部分がある。

   「アルジラの美的センスと一緒にしないでよ」
   「シエロ?何か言った?」
   「…いえ…何も…」

   世間一般的な男前に興味が無い彼女が、
   仲間内でひそかに『獣好き』と呼ばれている理由を再確認したシエロは、
   前の席に座っているサーフの耳元に小さく囁いた。

   「ね?兄貴。俺の予想通りあの先生だったでしょ?」

   よく通る声でこれからの事を話すゲイルを見つめたシエロは。

   「兄貴?」

   一向に返ってこない返事に、戸惑ったように再度サーフに目をやる。

   「ん?あぁ、そうだな」

   やっとシエロの声に気付いた様に声だけで答えて。
   ゲイルから目を離さないままじっと見つめているサーフに首を傾げる。
   普段何にも興味を示さないようなサーフがそんな事をするのは初めてだからだ。
   何かを集中して見つめているなんて以っての外だと言えるだろう。

   「まさか…ねぇ?」

   嫌な予感に思わず窓の外を眺めて。

   「ゲイル…か」

   何かを企むようなサーフの呟きに、
   これから起こるであろう波瀾万丈な一年に思いを馳せた。

   お題に続く

   *********

   今後はお題へと場所を移して行きます☆

モドル