かなしそうな顔
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[1:会いたくて -Lover Soul-]
上り始めた朝日を眺めて大きく伸びをしたレインは、
朝早くからアレンビーと修業に出掛けてしまった相棒の事を考えて
大きく溜息を吐いた。
明日もGF(ガンダムファイト)がある。
今はしっかりと身体を鍛えたりしなければいけない時なのだろう。
「…つまんない…な」
クルーとしてこんな事を言っていてはいけない事はわかっている。
でもガンダムの整備はドモンが帰って来てからでなければ出来ないし、
何よりも緊張し通しな毎日に疲れたというのも正直ある。
そして今は、何度も浮かんでくる人物で頭がいっぱいだった。
「…シュバルツ…」
胸の奥底に響く声。
鍛えられた身体。
優しい瞳。
仮面の奥に隠された姿はわからないけれど、
懐かしい大好きだった匂いがする人。
「っ!やだ、私ったら!」
無意識の内にその事ばかり考えてしまう自分を叱責して、
レインは布団から起き上がった。
相手は敵なのだ。
そんな風に考えてはいけない人だという事はわかっている。
だがそう思えば思う程気持ちが止められないのは。
いけないと言われれば余計やりたくなる子供の心境と
同じなのかもと小さく苦笑して。
「でも、少しでもいい…」
会いたいという言葉は、開け放たれた窓から空に消えていってしまった。
[2:二人きりで行こうよ]
いつまでも部屋でウジウジしているのも嫌だったので、
近くの公園まで来たレインは、誰もいない小さなブランコに腰掛けた。
昔は何も感じなかったブランコの椅子が小さく感じて。
「当たり前、か」
自分も大きくなったのだと苦笑する。
存在を確かめるように数回前後に揺らしたら、
何だか楽しくなってきて子供のように大きく漕いでみた。
「どうやらお姫様は退屈らしいな」
「キャッ!」
不意に後ろから聞こえた楽しそうな声に、慌てて漕ぐのを止めて顔を赤らめる
。
「驚かせてしまったかな?」
悪かった、なんて謝る声が笑いを堪えている事がわかるから。
「う…」
恥ずかしそうに俯いて地面に転がる石ころを蹴った。
「よろしければお相手いたしましょうか?」
お嬢様、なんて言いながら近づいてくる声に胸が高鳴る。
もうとっくに誰かわかっているけれど、振り向く事が出来なくて。
「それとも、私じゃ役不足、かな?」
「ち、違っ!」
申し訳なさそうな声に慌てて顔を上げたら、
楽しげなシュバルツの瞳と目が合って。
「騙したのね?」
ぷいっと顔を反らした。
そんな姿が余計子供っぽく映るのだけれど、レインは気付かないらしい。
「暇なら今日は私と一緒に過ごさないか?」
ちょうど退屈していたところなんだ、なんてシュバルツに言われて戸惑う。
「で、でも…あなただって試合が…」
今日は試合がないにしろ、明日は確かチボデーとの試合を控えていたはずだ。
自分なんかと遊んでいる暇はないんじゃないかと
不安になるのも当然だと言えるだろう。
「私もたまには息抜きしなければ疲れてしまうのでね」
シュバルツの言葉はきっと、レインを安心させる為に言った言葉なのだろう。
淋しそうにしている人を放ってはおけない人なのだからと、小さく苦笑して。
「じゃあ、お相手してもらおうかしら」
あっさりと承諾してしまったのは、
シュバルツの優しさを無下にしたくなかったのと。
明日の事なんて考えずにただ側にいたいという
我が儘な気持ちがあったからかもしれない。
「何処でもお供させていただきますよ、お嬢様」
そしてそれは、優しく微笑むシュバルツ自身も望んでいる事のように思えて。
「行きましょ!」
レインはブランコから立ち上がるとシュバルツの腕を引いて、
子供の様に走り出した。
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あああ、、、レインが子供に、、、(大汗
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