旅立ちの詩3

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   『これだけは…聞かせてください』
   『なんだね』
   『キョウジさんにDG細胞を埋め込むという事は、
    他の人達のようになる事はないんですか?』
   『暴走しないか…という事かね』
   『そうです』

   ミケロ達やシャッフル同盟の仲間達がDG細胞に侵された時、
   まるで洗脳されたように暴走していたのだ。
   シュバルツはキョウジによってDG細胞で作られた分身だったから
   暴走はしなかったが、今回もそうとは限らない。
   ライゾウはモニターに映るキョウジを見つめると。

   『DGがいなくなった今、細胞をつかって操ろうとする者はいない。
    それに、何もDG細胞そのものを埋め込む訳ではない。
    害のない、分解した細胞のみを埋め込むのだ』

   大丈夫だ、と厳しい博士の顔で言った。

   『では、全くの別人になる事は?』
   『ありえん。細胞を埋め込むと同時に体の中でその細胞が急激に増殖し、
    細胞の記憶を使って動く事になるのだからな』
   『…どちらにせよ、保証はあるのですか?』
   『保証?』

   そこまで聞くと、レインは今までにない強い瞳でライゾウを見つめた。

   『どちらになってもドモンは苦しみます。
    もし最悪の状況になった場合…いくらおじ様でも許しません』

   しばらく驚いたようにレインを見つめていたライゾウは、
   急に楽しそうに大声で笑い出した。

   『なっ!』
   『ドモンは幸せ者だな、こんなにレイン君に想われていて』
   『わ、笑い事じゃありません!私は…』
   『大丈夫だよ』

   言い返そうとしたレインは、不意に真剣な声を聞いて黙り込んだ。

   『もしそうなった場合、私が責任を持ってキョウジを殺す…命に代えてもな』

   本人ではないにせよ、生き返らせた息子を殺すのはどんなに辛いだろう。
   しかしライゾウは全てを受け入れ、そして決意したのだ。

   レインにはとても出来ないくらいの覚悟を持っているのだと、
   初めて知った気がした。

   『それが…私なりの罪の償い方だ』
   『おじ様…』

   これしきの事で償えるとは思わんがな、と苦笑するライゾウは、
   広く、そして優しい父親の顔になっていた。

   「…イン…レイン!」
   「えっ!?」

   ドモンの声に引き戻されたレインは。

   「どうした?」
   「な、何でもないわ」

   訝し気なドモンを一度強く抱き締めると。

   「さ、ドモン!お兄さんに会いに行きましょう」
   「お、おい!」

   焦るドモンの手を引くと、研究所目指して走り出した。

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